リスボンでスリに遭った話:財布を3秒で失った経緯
June 28, 2026 · 1 min read
財布はジャケットの前ポケットに入っていた。次の瞬間には、なくなっていた。手の感触もなければ、顔を見たわけでもなく、物音ひとつ聞こえなかった。3秒、いや、もっと短かったかもしれない。その間にカードも現金も身分証も消えた。誰も警告してくれないことがある。盗まれること自体は、立ち直るのが簡単な部分だ。本当に痛いのは、その後の5分間だ。
約4,000ユーロを払って学んだ教訓がこれだ。口座を空にするのはスリではない。あなたのカードがどう「イエス」と言うことを許されているか、それが問題なのだ。
28番路面電車での3秒間
乗ったのは、どのガイドブックも勧めてくる、あの可愛い黄色いTram 28Eだった。マルティン・モニス(Martim Moniz)の近く、乗り込もうとする人の波の中で、私たちは肩がぶつかり合うほどぎゅうぎゅうに押し込まれていた。軽くぶつかられ、小さく謝る声がして、腕に手が触れた。誰かが体勢を立て直しているのだと思った。古典的な「ぶつかってすり取る」手口で、気づいたときにはもう終わっていた。(私たち自身のリスボン3日間ガイドが、まさにこの路面電車でポケットに気をつけるようはっきり警告している。私はその一文を読み、うなずいておきながら、それでも贈り物のように無防備に立っていた。)
気づいたのは次の停留所で、もうそこにない財布を探して体を叩いたときだった。銀行アプリでカードを凍結するのに5分ほどかかった。停止できたころには、通知が積み上がっていた。最初は少額のタッチ決済、次にもっと大きな金額、そして本来ならPINなしでは絶対に通るはずのない請求まで。最終的に確定した合計は約4,000ユーロ。私が反応するまでのわずかな時間で使われていた。
被害を出したのは、対面決済をいまだに署名で承認する古いカードだった。PINもなし。タッチ決済の上限もなし。見知らぬ人が一瞬で真似できる走り書き一つで済む。だから、私がカードを止めるまで、利用額には事実上の上限がなかった。スリは確かに腕利きだった。だが、より大きな問題はカードのほうだった。
リスボンのスリ多発スポット(それでも安全な街である理由)
リスボンの名誉のために言っておきたい。私はこの街が大好きだし、また訪れるつもりだ。リスボンは今もヨーロッパでも比較的安全な首都の一つで、ここで起きる犯罪は非暴力的だ。人混みでの静かなすり取りや、カフェの椅子から鞄をそっと持ち去る類いのものだ。観光客の増加で軽犯罪は少し増えたが、リスボンはバルセロナやパリ、ローマとは比べものにならない。
スリたちにはお気に入りの「仕事場」がある。それは、まさにあなたが行きたい場所だ。
- Tram 28E。特にマルティン・モニス(Martim Moniz)、セー大聖堂(Se)、ルイス・デ・カモンイス広場(Praca Luis de Camoes)での乗り降りのとき。
- バイシャ・シアード駅(Baixa-Chiado)のメトロのエスカレーター。みんなが近くに立ち、スマホを見つめている。
- サンタ・ジュスタのリフト(Elevador de Santa Justa)の行列、ロシオ広場(Rossio)、そして開けたコメルシオ広場(Praca do Comercio)。
- 混み合う週末のベレン(Belem)、そして疲れて到着した人が荷物と格闘する空港行きのメトロ・レッドライン。
どれも避ける理由にはならない。ただ、そこでの立ち方を変えればいいだけだ。
ヨーロッパ全域で同じ手口
私の身に起きたことは、リスボン特有の話ではなく、ヨーロッパの都市全般の話だ。さまざまな指標で見ると、最悪なのはパリ、バルセロナ、ローマだ(順位は誰が数えるかで入れ替わる)。多発スポットはまるでヒット曲集のようだ。バルセロナのLas Ramblas、パリのメトロに加えてエッフェル塔とモンマルトル、そしてローマのテルミニ駅。人混みこそ、こうしたチームが仕事に使う材料だ。混雑を避けて計画を立てるべき理由が、また一つ増える(夏のヨーロッパで人混みを避ける方法)。
腕のいい連中は役割分担で動く。これは後ほど段階を追って説明する。**見張り役(spotter)**が標的を定め、**妨害役(blocker)**がその瞬間を作り、**抜き役(dipper)**が隙にすり取り、**受け渡し役(passer)**が1秒以内に品物を持ち去る。だから抜き役の手元すら、すぐに何も残らない。
隙を作るための手口は、どの国でも共通している。距離を詰めてくる署名集めのクリップボード、ミサンガや指輪落とし、ジャケットにわざとこぼされた液体とそれを拭おうとする親切な手、財布を「確認」したがる偽警官、そしてテーブルに広げられた地図の下で仲間がすり取る手口。とはいえ、これで疑心暗鬼になる必要はない。道を教えてくれる人のほとんどは、ただ親切なだけだ。警戒とは身構え方であって、恐怖ではない。
4,000ユーロを払って学んだ教訓:カードはどう「イエス」と言うのか
カード決済はすべてが同じように守られているわけではない。そして、その違いこそが話のすべてだ。
- **磁気ストライプと署名の組み合わせは、存在する中で最も弱い。**静的なカード情報と偽造可能な署名に頼っており、PINの確認も非接触決済の1回あたりの上限も飛び越えてしまう。だから、カードが止められるまで利用額には事実上の上限がない。これが、私がはまった罠だ。
- **ICチップとPIN(chip-and-PIN)は、対面決済では最も強い方法だ。**取引のたびに固有の暗号(クリプトグラム)が生成され、PINは署名よりはるかに偽造しにくい。
- **非接触のタッチ決済は、その中間に位置する。**EUでは通常、約50ユーロまではPINなしでタッチできる。そして累計でおよそ150ユーロ、または5回ほどのタッチを超えると、たいていPINが要求される(これは上限であって保証ではない。銀行はもっと低い限度額を設定できるし、いつでもPINを求められる)。イギリスの上限は100ポンドで、2026年3月から規制緩和が進む予定だ。
- **モバイルウォレット(Apple PayやGoogle Pay)は、タッチ決済の中で最も強い。**支払いのたびにFace IDか指紋認証が必要で、一度きりの、端末に紐づいたトークンを使う。だから、スマホを盗まれても本人なしには決済できず、固定の上限もない。
ヨーロッパ発行のカードを持っているなら、少し安心していい。ここではICチップとPINが標準で、署名による承認が問題になるのは主にアメリカ発行のカードか、チップが読み取れないときの磁気ストライプへの切り替えのときだ。ただし、「主に」は「絶対にない」ではない。
狙いにくい相手になるには
世界一流のチームに狙うのをやめさせることはできない。だが、自分を「割に合わない、手間のかかる相手」にすることはできる。それには二つの層がある。カードそのものと、その持ち運び方だ。
出発前にカードを整える
こうした習慣があれば、4,000ユーロを失ったあの午後は、50ユーロのちょっとした面倒で済んでいたはずだ。
- 銀行アプリで非接触決済と1回あたりの利用限度額を低めに設定し、即時通知をオンにすること。そうすれば、カードを盗まれても最初のタッチで通知が届く。
- 残高を少なくした旅行専用カードを持ち歩き、メインのカードはホテルの金庫に置いておくこと。
- 泥棒には使えないモバイルウォレットのタッチ決済を優先すること。RFID遮断スリーブは悪くないが、効果は限定的だ。本当の脅威は無線スキマーではなく、人の手だからだ。
狙いにくい相手として振る舞う
- 人混みでは鞄を体の前で持ち、ファスナーに手を添えること。乗り物の中ではバックパックを胸の前に回すこと。
- 後ろポケットには絶対に貴重品を入れないこと。あのポケットは、いわばショーウィンドウだ。
- パスポート、予備のカード、現金には隠し持つマネーベルトを使い、貴重品を分散させること。そうすれば、一度のすり取りですべてを失うことはない。
- Tram 28がドアまで満員で来たら、それは見送って次を待つこと。
すり取りは実際にどう進むのか、最初から最後まで
ゆっくり見ていくと、私のあの3秒の裏で起きていた一連の流れは、その正確さゆえにいっそ退屈なほどだ。
- **標的にされる。**見張り役が、開いた鞄、見えている財布、テーブルに表向きで置かれたスマホに目をつける。
- **人混みが現れる、あるいは作られる。**満員の路面電車、クリップボード、こぼれた液体、突然の言い争い。
- **妨害役が足止めする。**誰かが進路に入り込み、もたついて謝り、あなたを一瞬固まらせる。
- **抜き役がすり取る。**その隙に、慣れた手が財布を抜き取る。これが、あの3秒だ。
- **受け渡し役がそれを持って消える。**だから、あなたに触れた人物の手元には、もう何も残っていない。
- **利用が始まる。**最初はタッチ決済、次に大きな金額。ここで意味を持つ唯一の時計は、あなたがどれだけ早くカードを止められるかだ。
最初の5分間、そして翌日
起きてしまったら、すべてはスピード次第だ。
- **まず銀行アプリでカードを凍結する。**即座にでき、24時間365日使え、Apple PayやGoogle Payも同時に止められる。できない場合は、銀行の緊急連絡窓口に電話する。何よりも先に、これをやること。
- **次に被害届を出す。**ほとんどの旅行保険の請求には被害届が必要で、24時間以内が求められることも多い。リスボンでは、レスタウラドーレス広場(Restauradores Square)にあるPSP観光警察(PSP Tourism Police)に英語を話せる警官がいる。ポルトガルの緊急通報番号は112だ。
- **再発行カードが届くまでは、おおむね7営業日から10営業日かかると見ておくこと。**予備を持ち歩くべき、何よりの理由だ。
自動的に返金されると思い込まないこと。EUの規則(PSD2)では、不正取引に対する利用者の負担額は原則として50ユーロが上限とされ、速やかな返金が義務づけられている。ただし、詐欺や重大な過失の場合には例外があり、時期もまちまちだ。遅れずに届け出ること。
財布を盗まれるときは、スマホをなくしていたり、電池が切れていたりすることも多い。すると、見知らぬ街で、お金もなければ地図もない状態に陥る。こここそ、ツールが役立つ唯一の場面だ。Travolpなら、旅程やダウンロード済みの地図がオフラインでも使える(その方法はこちら)。だから、スマホの電池が切れていても、ホテルや警察署まで戻る道案内をしてくれるし、電波が戻ればチャットで計画を立て直せる。スリを防いではくれない。ただ、盗まれたうえに立ち往生まですることはなくなる、ということだ。
結論
私が盗まれたのは、リスボンが危険だからではない。泥棒の手が届くところに財布を入れ、何にでも「イエス」と言うカードを持ったまま、人混みの中に立っていたからだ。どちらも直せるし、どちらも旅の時間を一瞬たりとも奪わない。カードと、その持ち運び方を直しておけば、あのひどい3秒は、あなたが語る物語のままで済む。口座に空いた穴にはならない。
次の旅を計画するときは、財布が、あるいは電波が役に立たなくなっても、なお機能してくれるものの上に組み立てよう。Travolpで旅を計画する、またはサインイン。